避難所で命を守るもう一つの備え──中越地震が教えた「エコノミークラス症候群」の教訓

2004年10月23日に発生した新潟県中越地震(M6.8)は、最大震度7を記録し、家屋倒壊や土砂災害などで甚大な被害をもたらしました。
しかし、注目すべきは死者68人のうち、実際に建物倒壊などで亡くなったのは16人にとどまり、残る52人が避難生活中の健康被害(エコノミークラス症候群など)、いわゆる災害関連死による二次的要因だった(*)という点です。

この事実は、災害対策の新たな視点──「避難所における健康リスク管理」の必要性を日本社会に突きつけました。

(*)出典:新潟県「新潟県中越大震災による被害情報」https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/59765.pdf

画像出典:防災・減災にいがたプロジェクト2024 https://www.hrr.mlit.go.jp/project2024/history/2004-2.html

「助かった命を守る」ことの難しさ

中越地震では、寒さと不安の中、避難所や車中での長期生活を余儀なくされた住民が多くいました。その結果、足の静脈に血栓ができて肺に詰まる「エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)」が多発。避難生活中の健康被害である災害関連死が、“新たな災害リスク”として全国的に注目されるきっかけとなりました。

「命は助かったのに、避難中に命を落とす」──この現実は、防災対策が「発災対応」だけでなく「生活支援」まで含めた総合的な危機管理でなければならないことを示しています。

画像出典: 国土交通省 北陸地方整備局 https://www.hrr.mlit.go.jp/saigai/H161023/chuetsu-jishin/1/1-2-2.html

企業・自治体が取り組むべき「避難生活のリスク管理」

災害後の健康リスクは、自治体や防災担当者だけでなく、企業のBCP(事業継続計画)にも密接に関わります。もし自社の従業員が避難生活を送ることになった場合、どのように健康を守れるか──それは、企業の危機管理力の一部といっても過言ではありません。

以下は、企業・自治体が今後の防災計画に組み込むべき視点です。

① 避難所・社内避難スペースでの「健康動線」設計

  • 長時間の同一姿勢を避けるためのスペース配置・ストレッチ啓発
  • 段ボールベッドやエアマットの導入による血流阻害防止
  • 水分補給や歩行タイミングを定期的に促すルール設定

② BCPにおける「従業員の健康支援」対策

  • 災害時の健康チェックリストをBCPマニュアルに明記
  • 医療・看護チームや産業医との連携体制整備
  • 水・電力・衛生用品の備蓄に加え、「避難生活の質」を支える備品の導入

③ テクノロジーを活用した避難生活支援

  • AI健康モニタリングウェアラブル端末による体調データの可視化
  • 災害時でも稼働できるオフグリッド冷蔵システムで医薬品を適切に保存
  • 高齢者や持病のある従業員の「健康弱者管理」を平時からデータ連携
画像出典:消防防災博物館 https://www.bousaihaku.com/otherdisaster/14075/

SAKIGAKE JAPANの取り組み ― “生き延びる”から“生き続ける”防災へ

SAKIGAKE JAPANでは、「防災をあたりまえにする社会づくり」を掲げ、発災直後の命を守るだけでなく、避難生活の安全・健康を支える仕組みづくりに取り組んでいます。

  • 災害時でも使用できるオフグリッド型冷蔵・冷凍装置による医療・食料支援
  • 避難所・企業・自治体をつなぐAI災害リスク管理ソリューション
  • 防災計画策定・訓練支援・BCP更新支援サービス

中越地震の教訓が示したのは、「助かった後の命をどう守るか」という問いです。防災の目的は“命を救う”ことにとどまらず、“生き続けられる環境を守る”こと。この視点を共有しながら、SAKIGAKE JAPANは防災と健康の両立を目指す企業・自治体を支援してまいります。


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