はじめに ― 避難所が、変わらなければならない理由
「避難所に行ったら、もっとつらくなった」
能登半島地震をはじめ、大規模災害のたびに聞こえてくるこの声は、日本の避難所が抱える構造的な課題を端的に表しています。政府は2026年11月の防災庁発足を目指しており、「事前防災から復旧・復興までを一貫して担う」司令塔機能の構築を進めています。避難生活の環境改善や防災DXの推進も、防災庁が担う重要な役割のひとつとして明記。まさに今、日本の防災体制は大きな転換点を迎えています。そのタイミングで、株式会社SAKIGAKE JAPANはPanasonic EW社とともに、「世界標準の次世代避難所」の設計プロジェクトに取り組んでいます。

プロジェクトの概要 ― 「次世代避難所」とは何か
このプロジェクトが目指すのは、単なる「避難所の改善」ではありません。施設空間のDX化・AX化を推進し、平時から続く施設空間のウェルビーイングを実現するという、根本的な発想の転換です。キーワードは2つです。
① DX/AXによる現場の変革
2024年1月の能登半島地震では、各種避難所データの集約整理・管理のための環境整備、電力供給・通信が途絶したエリアへの衛星通信サービスの配置、交通系ICカードを活用した避難者情報の把握など、防災DXが実際の災害対応に活用されました。しかしこれらは、あくまでも「発災後の対応」です。
私たちが目指すのは、発災前から機能する「平時から稼働するDX避難所インフラ」です。受付・物資管理・要配慮者ケア・情報共有といった避難所運営の全プロセスをデジタルで一元化し、災害発生時にも迷わず機能する仕組みを、平時から運用することを設計の前提としています。
② 平時から続く「ウェルビーイング」の追求
従来の避難所は、「緊急時の一時的な収容施設」として設計されてきました。その結果、プライバシーの欠如・環境の劣悪さ・精神的ストレスといった問題が繰り返し生じてきました。
私たちのプロジェクトでは、避難所を「非常時にだけ使う空間」ではなく、平時においても地域コミュニティの拠点として機能する、人が心地よくいられる空間として設計し直すことを目標としています。照明・空調・音響・レイアウト・通信環境といった施設の物理的な設計から、デジタルによる運営支援まで、すべてをウェルビーイングの視点から統合的に設計します。

なぜPanasonicと、なぜ今なのか
Panasonic EW社は、空間デザイン・施設環境・エネルギーマネジメントにおいて世界トップクラスの知見と実績を持つ企業です。防災の専門会社であるSAKIGAKE JAPANと、空間・環境設計のリーダーであるPanasonicが組み合わさることで、「防災の機能性」と「人間中心の空間設計」を融合した、これまでにない次世代避難所モデルの構築が可能になります。
そして今この瞬間が、最も重要なタイミングです。
防災庁設置法案は2026年3月6日に閣議決定され、国会への提出が行われました。防災庁は「人命・人権最優先の防災立国の実現」を掲げ、平時から復旧・復興までの一貫した司令塔機能を担います。防災庁は避難生活の環境改善や防災DXの推進などにも取り組む方針を掲げており、自治体との連携を強化していく姿勢を示しています。
防災庁が発足するこの年に、次世代避難所の実証モデルを確立することは、日本の防災政策の転換と完全に連動した取り組みです。私たちはこのタイミングを、偶然ではなく必然として捉えています。

これまでの取り組み ― 多くの声から学んだこと
プロジェクトは既に動いています。これまで自治体・現場担当者・有識者の皆さまへのヒアリングを重ね、現場のリアルな課題と期待を丁寧に収集してきました。ヒアリングを通じて見えてきた現場の声は、大きく3つに集約されます。
「運営側の負担が限界に来ている」避難所の運営は、自治体職員や地域ボランティアに大きく依存しており、発災直後の混乱期には人的負担が極限に達します。デジタルによる業務の自動化・効率化が急務です。
「避難者の人間としての尊厳が守られていない」プライバシーのない雑魚寝、劣悪な衛生環境、情報の不透明さ――これらは避難所生活における「二次被害」です。施設空間そのものの設計から見直す必要があります。
「平時に使われないから、いざというとき機能しない」避難所用の設備や仕組みが、普段から使われていないため、実際の災害時に担当者も使い方を把握していないというケースが頻発しています。「平時から使う」設計が不可欠です。
これらの声のひとつひとつが、プロジェクトの設計思想に反映されています。ご協力いただいた皆さまへの感謝は言葉では言い尽くせません。まだ十分なご恩返しができていませんが、必ず形にしていきます。

今期の継続決定 ― Panasonic EW社の承認を経て
2026年3月18日、Panasonic EW社の社長・役員の皆さまへ成果発表を行い、今期プロジェクトの継続が正式に決定しました。
大企業のトップへのプレゼンテーションということで、プレッシャーのある場面でしたが、これまでのヒアリングで得た現場の声と、私たちが描く次世代避難所のビジョンが、しっかりと評価されたことを大変うれしく思っています。
これはゴールではなく、実証フェーズへ向けた「スタートライン」です。

協働パートナーを探しています ― 自治体・施設の皆さまへ
今年は防災庁が発足する、日本の防災史における大きな転換点です。このタイミングで、弊社では実証実験を通じて協働いただける自治体・施設の皆さまを探しています。対象となる皆さまのイメージは以下の通りです。
- 避難所運営のDX化・効率化に課題を感じている自治体の担当者の方
- 避難所の環境改善・ウェルビーイング向上に関心のある自治体・施設の方
- 次世代の防災インフラ整備に先進的に取り組みたい地域・組織の方
- 防災庁発足を前に、国の政策と連動した取り組みを進めたい自治体の方
実証実験への参加は、単なるテストへの協力ではありません。日本の避難所の標準を変える、歴史的なプロジェクトへの参画です。現場の声を持ち寄り、ともに世界標準の次世代避難所を作り上げていく仲間を求めています。
ご関心のある方は、ぜひお気軽にご連絡ください。まずは状況のヒアリングから始めさせていただきます。
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