2026年8月2日から7日まで、福岡国際会議場を中心に開催された「Asia Oceania Geosciences Society 23rd Annual Meeting(AOGS2026)」において、株式会社SAKIGAKE JAPAN代表・近藤宗俊がポスター発表を行いました。
発表題目は、「Designing an Off-grid Distributed Cold Storage and Logistics System for Coastal Hazard Preparedness(沿岸災害への備えに向けたオフグリッド分散型コールドストレージ・物流システムの設計)」です。

世界55カ国・地域から約3,900人が集結
AOGSは、アジア・オセアニア地域を中心に、世界各国の地球科学研究者が集う国際学術コミュニティです。大気科学、海洋科学、水文学、固体地球科学、惑星科学、太陽地球科学、生物地球科学、学際的地球科学という幅広い分野を横断し、地球と宇宙に関する最新の研究成果が共有されています。
福岡で開催された第23回年次大会には、世界55カ国・地域から3,917人が参加。口頭発表1,983件、ポスター発表1,716件、合計3,699件の研究発表が行われました。日本での開催は2014年の札幌大会以来、12年ぶりです。
1,700件を超えるポスターが並ぶ会場では、大学や研究機関の研究者、博士課程の学生、各国の専門家が図やデータを指しながら議論を交わしていました。単に研究成果を展示するのではなく、分野や国境を越えて新たな研究や連携が生まれていく、まさに「知の熱気」に満ちた空間でした。

平時の水産物流を、沿岸災害時のレジリエンスへ
今回発表したのは、インドネシアの離島・沿岸地域を対象とする、オフグリッド型コールドチェーンの設計です。
こうした地域の水産物流では、漁獲後の鮮度を保つために氷やディーゼル発電機が使用されています。しかし、電力設備や保冷施設が十分でない地域では、市場へ届くまでに水産物の品質が低下し、食品ロスや漁業者の収入減少につながります。
さらに、地震、津波、高潮、洪水などの沿岸災害が発生すると、電力、燃料、道路、港湾、通信といった複数のインフラが同時に機能を失う可能性があります。大型の冷蔵施設があっても、電力や燃料の供給が止まれば、その機能を維持できるとは限りません。
そこで私たちは、太陽光発電、蓄電池、PCM(相変化材料)、高断熱保冷ボックスなどを組み合わせ、特定の大型施設だけに依存しない分散型システムを構想しています。
漁船上での保冷、離島での一時保管、本土への海上輸送、市場までの陸上輸送。それぞれを個別に考えるのではなく、災害や停電が発生しても流通全体が完全には途切れない仕組みとして設計することが、本研究の中心です。

オフグリッド型 水産コールドチェーン輸送システム
SAKIGAKE JAPANが構築を進める「オフグリッド型 水産コールドチェーン輸送システム」は、インドネシアの未電化離島・沿岸地域を対象に、水産物流の脱炭素化と食品ロス削減を目指す取り組みです。東京都「グローバルサウスGX促進プロジェクト」の採択事業として、現地での実証・事業開発を進めています。

システムでは、太陽光発電、蓄電池、PCM(特殊蓄冷材)、高断熱保冷ボックス、移動式保冷庫などを組み合わせ、漁獲直後の船上保冷から、離島・沿岸部の保冷ハブ、本土・市場への陸上輸送までを一体で設計します。商用電源やディーゼル発電、冷凍トラックへの依存を抑えながら、電力インフラが脆弱な地域でも持続可能なコールドチェーンの構築を目指しています。
また、平時の水産物流だけでなく、将来的には災害時の地域保冷拠点としての活用も視野に入れています。GXによる脱炭素化と地域レジリエンスを両立し、日常の物流を支える仕組みを災害への備えにもつなげていく——今回AOGS2026で発表した研究は、こうした「冷のインフラ」の社会実装を目指す取り組みの一環です。
オフグリッド型 水産コールドチェーン輸送システムの詳細はこちら
技術だけでなく「社会の中で機能する条件」を研究する
本発表の学術的な価値は、PCMや保冷ボックスの性能だけでなく、それらを地域のレジリエンス向上へどのように結びつけるかを、学際的に検討している点にあります。実装には、保冷時間や温度変化などの技術評価に加えて、漁獲量、輸送距離、電力事情、導入コスト、運用人材、住民による維持管理、災害時の利用ルールなどを同時に考える必要があります。
これは、防災、エネルギー、物流、水産業、気候変動適応、地域開発を横断するテーマです。国際学会での採択は研究の完成を意味するものではありませんが、国際的な研究コミュニティの議論に付す価値のあるテーマとして、AOGSのプログラムに組み込まれたことを意味します。
現地で進めている実証や事業開発を経験則だけで終わらせず、検証可能な枠組みとして整理する。そのための重要な一歩となりました。
現場から学術へ、学術から再び現場へ
SAKIGAKE JAPANは、東京都「グローバルサウスのGX促進プロジェクト」の採択事業として、インドネシアにおけるオフグリッド型水産コールドチェーンの構築を進めています。
私たちが重視しているのは、日本の技術をそのまま海外へ持ち込むことではありません。現地の漁業者、物流事業者、大学、企業、行政とともに課題を確認し、その地域で継続して運用できる形へ設計し直すことです。
現場で得た知見を研究として整理し、国際的な議論に開く。そして、研究者や専門家から得た視点を、再び現地の設計や実証へ反映する。この「現場と学術の往復」が、社会実装の精度を高めます。
また、本システムは災害時だけの設備ではありません。平時には水産物の鮮度維持、食品ロスの削減、漁業者の収益向上、ディーゼル燃料への依存低減に貢献し、非常時には食料や医薬品などの低温物流を支える可能性があります。
日常の経済活動が、そのまま災害への備えになる。これは、SAKIGAKE JAPANが掲げる「フェーズフリー」と「自律分散」を、沿岸地域のインフラとして具体化する取り組みです。

日本の防災・環境適応技術を世界へ
世界55カ国・地域の研究者が集まるAOGS2026で、私たちの社会実装型の取り組みを発表できたことは、大きな節目となりました。
SAKIGAKE JAPANは今後も、日本の防災・環境適応技術を製品として輸出するだけでなく、地域の課題に合わせて組み合わせ、検証し、継続して運用できる仕組みへ変えていきます。科学と事業、技術と地域、平時と災害時をつなぎながら、日本発の技術を世界で機能する社会システムとして実装してまいります。
AOGS2026の開催・運営に携わった皆さま、発表をご覧いただいた皆さま、そして本プロジェクトを支えてくださっている国内外のパートナーの皆さまに、心より御礼申し上げます。
【参考】
・AOGS2026公式サイト
・AOGS2026 Meeting Records
