噴火は1週間で終わらなかった―1977年有珠山噴火、4年半続いた地殻変動と長期化する複合被害

はじめに

1977年8月6日早朝、北海道の有珠山周辺で有感地震が多発し始めました。昭和新山を形成した1944〜45年噴火から32年ぶりとなるこの噴火は、翌7日午前9時12分、山頂からの軽石噴火(プリニー式噴火)という形で始まります。噴煙は1時間後には高さ12,000mに到達しました。

前兆地震の発生からわずか約30時間という短時間での噴火でしたが、住民は事前に避難しており、噴火直後の人的被害はありませんでした。しかし、この噴火の本当の脅威は、「噴火そのもの」ではなく「その後」に潜んでいました。

本記事では、1977年有珠山噴火の経緯を振り返りながら、「災害の初動対応」と「長期化するリスクへの備え」は別物であるという教訓を考えます。

画像出典:有珠山ロープウェイ https://usuzan.hokkaido.jp/archives/blog/4690

わずか1週間の「第1期噴火」

8月7日の噴火開始後、大小の噴火は断続的に続き、8月14日未明までの約1週間で、いったん「第1期噴火」は収束します。この間、軽石や火山灰が有珠山周辺に厚く降り積もり、山麓の住宅は全壊約8棟、半壊約4棟、一部破損約370棟という被害を受けました。農作物や森林への被害も広範囲に及び、宗谷・釧路・根室など道内の大半の地域に降灰が確認されています。

多くの人にとって、「噴火」といえばこの1週間の激しい活動をイメージするかもしれません。しかし実際には、災害はここで終わっていませんでした。


「終わったはずの噴火」が、その後も4年半続いた

8月14日の第1期噴火終息後も、有珠山の活動は収まりませんでした。同年11月16日から翌1978年10月27日まで、水蒸気爆発やマグマ水蒸気爆発が断続的に発生します。さらに、地震活動と地殻変動そのものは、1982年3月まで実に約4年半にわたって継続しました。

この長期の地殻変動の過程で、火口原の中央部には新たな山体「有珠新山」が形成されていきます。噴火という「点」の出来事ではなく、数年単位で続く「線」としての災害であったことが、1977年噴火の大きな特徴です。


噴火後に発生した、より深刻な人的被害

そして、この噴火における最も重い教訓が、人的被害が「噴火直後」ではなく「噴火後の泥流」によって発生したという事実です。

噴火によって山肌に堆積した大量の火山灰や軽石は、その後の降雨によって泥流となって流れ下るようになりました。1979年には、この泥流災害により死者2名・行方不明者1名という犠牲者が発生しています。噴火発生時には迅速な避難によって守られたはずの命が、噴火から時間が経過した後の「二次災害」によって失われてしまったのです。

この事実は、「噴火活動が落ち着いた後こそ、別の種類のリスクが立ち上がる」という、災害対応における重要な視点を私たちに教えてくれます。


被害総額500億円超という「長期化するコスト」

1977年噴火による被害は、農業・土木・林業・観光など幅広い分野に及び、総額500億円を超える規模に達しました。これは、噴火直後の被害だけでなく、約4年半にわたる地殻変動と、その後の泥流被害が積み重なった結果です。

災害対応においては、噴火直後の緊急対応だけでなく、降灰除去やインフラ復旧、農業被害への対応といった、長期にわたる復旧コストの管理も同時に求められました。実際、当時は北海道農業開発公社に委託して降灰除去を実施し、収入を失った被災農家が除去作業によって賃金を得られる仕組みも導入されています。


企業防災・BCPへの示唆

1977年有珠山噴火の教訓は、「初動対応が成功したこと」と「その後も安全であること」は別問題であるという、企業のBCP策定における本質的な視点を提供してくれます。

第一に、災害を「点」ではなく「線」として捉えること。 噴火・地震・豪雨といった災害は、発生した瞬間だけでなく、その後数ヶ月〜数年にわたって二次的なリスクを生み続ける可能性があります。BCPにおいても、初動対応フェーズだけでなく、中長期的な復旧・警戒フェーズまでを見据えた計画が必要です。

第二に、「噴火活動が落ち着いた後」のリスクを軽視しないこと。 1979年の泥流災害は、噴火そのものではなく、その後に発生した降雨による二次災害でした。企業においても、危機的状況が一段落した直後にこそ、油断による二次被害のリスクが高まるという認識を持つことが重要です。

第三に、長期化する災害対応のコスト構造をあらかじめ想定しておくこと。 500億円を超えた被害の多くは、噴火直後だけでなく、その後の長期にわたる複合的な被害の積み重ねによるものでした。企業の危機管理においても、初期対応費用だけでなく、中長期的な復旧・補償コストまで含めた財務的な備えが求められます。

画像出典:有珠山ロープウェイ https://usuzan.hokkaido.jp/archives/blog/4690

関連ソリューションのご紹介

1977年有珠山噴火が示したのは、「噴火そのものへの備え」だけでは不十分で、その後の地殻変動・泥流といった二次災害まで見据えた継続的な監視が不可欠だという教訓でした。SAKIGAKE JAPANが取り扱う以下のソリューションをご紹介します。

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土砂災害の兆候を、現場からリアルタイムに見守るDIPPS cloud
土砂災害の兆候を、現場からリアルタイムに見守るDIPPS cloud

1977年噴火の教訓が示すように、噴火警報が解除された後も、降灰・軽石が堆積した斜面では、降雨をきっかけとした泥流・土石流のリスクが長期間残り続けます。DIPPS Cloudは、こうした「噴火後」の見えにくい期間こそ重要な、継続的な斜面監視を可能にし、異常が検知されると管理画面の表示が緑から赤に変わり、関係者へ即時メール通知が届く仕組みです。

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おわりに

1977年有珠山噴火は、わずか30時間の前兆から始まり、1週間で激しい噴火活動が一段落した一方で、その後約4年半にわたって地殻変動が続き、さらに1979年には泥流災害によって3名の命が失われるという、長期化する災害の複雑さを私たちに示しました。

「噴火が収まった」「警報が解除された」という情報だけで安心するのではなく、その先に潜むリスクまで見据えて備える姿勢こそが、この噴火が残した最大の教訓です。私たちSAKIGAKE JAPANは、企業向け防災コンサルティングと災害リスク管理のプロフェッショナルとして、皆さまの防災対策・BCP策定を全力でサポートいたします。