はじめに
2026年5月16日・17日、熊本市で開催された「TKB48避難所訓練」に、SAKIGAKE JAPANも参加してきました。

「TKB48」とは、災害発生後48時間以内に「トイレ・キッチン・ベッド(Toilet・Kitchen・Bed)」を確保するという避難所環境改善の考え方です。今回の訓練では、最新の避難所装備の実演に加え、福岡市・高島市長と熊本市・大西市長による対談、そして避難所整備・災害関連死防止対策をテーマとしたトークセッションが行われ、防災担当者にとって非常に多くの学びがある2日間となりました。

市長対談:広域災害支援を「当たり前」にするための制度づくり
両市長の対談では、広域連携による災害支援を、特別な対応ではなく「当たり前の仕組み」として制度化する必要性が強調されました。
熊本地震10周年という節目で特別予算による大規模開催が可能になった一方、恒常的な財源確保や制度化が今後の課題であるとの指摘がありました。被災自治体だけで初動対応を担う現状には限界があり、国がリーダーシップを取り、防災庁が一元的に指揮を取れる体制への期待も語られています。
また、装備導入については「フルセットが理想だが、予算・規模に応じた組み合わせが現実的」という現場感のある議論も。福岡市の14万人規模の避難想定を例に、費用対効果を踏まえた段階的な整備の必要性が共有されました。

特に印象的だったのは、民間連携の具体例です。福岡市はキッチンカー6団体と協定を結んでおり、これを熊本・福岡間など広域での相互支援へと拡張する構想が示されました。行政だけでの対応には限界があり、民間との協定・コラボレーションが不可欠という認識が、両市長の間で一致していました。
夏季開催ならではの論点として、温度管理・食中毒対策といった衛生課題への言及もあり、画一的な「ワンパッケージ」ではなく、実践的かつ状況適応型の運用標準の必要性が確認されています。

トークセッション:避難所を「コミュニティ拠点」へ転換する
トークセッションでは、災害対策の標準化と組織的記憶の継承がテーマとなりました。
特に印象的だったのは、「災害経験は10年で失われる」という指摘です。経験者の知見を未経験の職員に継承し、再現性のある訓練を繰り返すことで、誰が対応しても標準化された判断ができる体制づくりが重要だと語られました。住民リーダーの育成も、地域の防災意識を維持するための鍵として挙げられています。

また、「個々の自助努力」から「広域連携システム」への進化という視点も示されました。備蓄を自治体単位で抱え込むのではなく、広域でシェアリングすることで、コストを最小化しつつ効果を最大化できるという考え方です。
最も重要だと感じたのは、避難所の質的転換についての議論です。避難所は単なる「雨風を防ぐ場所」ではなく、心身の健康を維持し、生活再建を支えるコミュニティ拠点であるべきだという視点が共有されました。適切な避難所運営によって、災害関連死や救急搬送をゼロにすることは可能であり、良好なコミュニケーションが被災者の引きこもりを防ぎ、心身の健康を保つという指摘は、今後の避難所設計において重要な示唆だと感じています。
おわりに
今回の訓練を通じて、防災対策が「個々の自治体の努力」から「広域での標準化された仕組み」へと進化していく過渡期にあることを強く感じました。

SAKIGAKE JAPANは、企業向け防災コンサルティングと災害リスク管理のプロフェッショナルとして、こうした最前線の知見を取り入れながら、皆さまの防災対策・BCP策定を全力でサポートしてまいります。
