グローバルサウスのGXに挑む第一歩
株式会社SAKIGAKE JAPANは、東京都および公益財団法人東京都環境公社が実施する「グローバルサウスのGX促進プロジェクト」に採択され、2025年12月16日から24日にかけて、インドネシア共和国にて初回の現地調査を実施しました。
インドネシアは、約1万7,000の島々から成る世界最大級の島しょ国家であり、地域ごとに電力、物流、冷蔵インフラの整備状況が大きく異なります。経済成長が続く一方で、農水産物の鮮度保持、食品ロス削減、地方部での物流効率化、災害時の物資保管など、複数の社会課題が存在しています。
今回の渡航では、オフグリッド型コールドストレージを中心に、GX/脱炭素、防災、食農物流の分野で、どのような実証・導入可能性があるのかを確認しました。SAKIGAKE JAPANにとって、本調査は日本発の先進的な防災・環境適応技術をグローバルサウスへ展開するための重要な第一歩となりました。

脱炭素とレジリエンスを同時に考える
本プログラムは、東京都内企業が有するGX関連技術・サービスをグローバルサウス諸国へ展開し、現地の脱炭素化と社会課題の解決を同時に推進することを目的としています。
GXという言葉は、しばしばCO2削減や再生可能エネルギー導入の文脈で語られます。しかし、インドネシアのように地理的条件が複雑で、自然災害リスクも高い国においては、脱炭素とあわせて「地域の強靭性」を高める視点が欠かせません。
特に、食料、医薬品、支援物資などを適切な温度で保管・輸送するコールドチェーンは、平時の経済活動だけでなく、災害時のレジリエンスにも直結する重要なインフラです。電力供給が不安定な地域や、災害によって既存インフラが停止する場面では、独立電源や省エネルギー技術を活用したオフグリッド型の冷蔵・冷凍システムが大きな役割を果たすと考えています。
現地課題を起点にした技術展開
現地ではまず、サステナビリティを専門とするNGO”Green Welfare Indonesia“との意見交換を通じて、インドネシアにおける社会課題やGX・防災分野のニーズについて確認しました。
その中で改めて感じたのは、日本の技術をそのまま海外に持ち込むだけでは、十分な社会実装にはつながらないということです。技術の性能や優位性はもちろん重要ですが、それ以上に、現地の生活環境、電力事情、物流網、地域コミュニティの実態に合わせて、どのように運用するかを設計する必要があります。
つまり、GX技術の海外展開では、「何を導入するか」と同じくらい、「誰が使い、誰が維持し、どのように地域に根づかせるか」が重要になります。今回の調査では、この視点を持ちながら、現地での導入可能性を一つずつ確認していきました。

ASEAN防災体制との接点
次に、在インドネシア日本国大使館および東南アジア諸国連合日本政府代表部の関係者の協力のもと、ジャカルタの”AHAセンター”を訪問しました。AHAセンターは、ASEAN地域における災害対応・人道支援の連携拠点です。
インドネシアは、地震、津波、洪水、火山噴火など、さまざまな自然災害リスクを抱えています。災害時には、情報、物資、電力、通信、物流が複合的に影響を受けます。そのため、GX技術も単なる脱炭素技術ではなく、災害対応力を高めるインフラとして位置づけることができます。
オフグリッド型コールドストレージは、平時には食品流通や地域産業を支え、災害時には食料・医薬品・支援物資の保管拠点として機能する可能性があります。この「平時にも有事にも役立つ」という考え方は、当社が重視する防災テクノロジーの展開方針とも合致しています。

食農物流の現場から見えたニーズ
また、防災の視点と並行して、今回の調査では食農物流の現場も確認しました。ジャカルタでは、日本食材マーケット「PAPAYA」および日本食材卸売「MASUYA」を視察し、現地における食品流通、温度管理、物流上の課題についてヒアリングを行いました。
高温多湿な気候下では、安定した温度管理が食品の品質維持に直結します。冷蔵・冷凍インフラの不足は、食品ロスの増加、販売機会の損失、消費者への安定供給の難しさにつながります。こうした課題は、都市部の商流だけでなく、地方部の農水産物の付加価値向上にも関係します。
この領域において、オフグリッド型コールドストレージは、食品ロスの削減や物流効率化に貢献できる可能性があります。さらに、地域に分散配置することで、災害時の食料供給拠点としても活用できる余地もあります。

官民連携による実装可能性
一方で、こうした技術を現地で実装するためには、企業単独の取り組みだけでは限界があります。現地制度、行政機関、国際協力機関、民間企業、地域コミュニティなど、複数のステークホルダーとの連携が不可欠です。
JICAインドネシア事務所では、インドネシアにおける過去の関連事例、現在のGX・防災・食農物流分野の動向、今後の市場展開や官民連携の可能性について意見交換を行いました。
こうした対話を通じて、実証候補地の選定、現地パートナーの役割分担、導入コスト、運用体制、収益モデル、公的支援制度との接続など、今後検討すべき論点が明確になりました。GXや防災に関わる事業は、単なる機器販売ではなく、地域に根づく仕組みづくりが求められます。
チルボンでの実証可能性
そして調査最終日には、実証候補地の一つとして、西ジャワ州チルボン地域も視察しました。「チルボン火力発電所」および周辺の港湾・漁業関係エリアでは、地域における冷蔵・冷凍インフラの必要性について確認できました。
漁業地域における冷蔵・冷凍インフラは、「漁獲物の鮮度保持」、「廃棄ロス削減」、「販売単価の向上」に直結します。漁獲後すぐに適切な温度管理ができる環境を整えることは、地域の所得向上や食料サプライチェーンの強化にもつながります。
また、地域に設置されるコールドストレージは、平時の経済活動を支えるだけでなく、災害時の食料・物資保管拠点としても活用できる可能性があります。地域産業の強化と防災力向上を同時に実現するモデルとして、今後さらに検討を深めていきます。



食料支援・地域福祉への広がり
さらに、ジャカルタでは食料支援に関わる「フリーミール」のキッチンも視察しました。食料支援や地域福祉の現場では、調理、保管、配送の各段階で温度管理や衛生管理が重要になります。
オフグリッド型コールドストレージは、食材の一時保管、調理済み食品の品質維持、災害時の食料支援拠点など、多様な使い方が考えられます。特に、電力や物流に制約がある地域では、独立性の高い冷蔵・冷凍設備が、地域の生活インフラを支える存在になり得ます。
このように、GX技術はCO2排出削減だけを目的とするものではありません。食の安全、地域福祉、防災、生活インフラの強靭化と一体で考えることで、より大きな社会的価値を生み出すことができます。

次の実証フェーズに向けて
今回のインドネシア渡航では、オフグリッド型コールドストレージに対する現地ニーズを、食農物流、防災、地域福祉の複数領域から確認することができました。加えて、Green Welfare Indonesia、AHAセンター、JICAインドネシア事務所、PAPAYA、MASUYA、チルボン地域の関係者など、今後の実証に向けた初期的な接点を構築できたことも重要な成果です。
ただし、今回の調査はあくまで第一歩です。現地で得られた手応えを実証につなげるためには、候補地の絞り込み、導入機器の仕様検討、現地パートナーとの役割分担、運用・保守体制、事業採算性の検討をさらに具体化していく必要があります。
SAKIGAKE JAPANは、今回得られた知見をもとに、日本の先進的な防災・環境適応技術を、現地の社会課題に寄り添う形で展開していきます。そして、グローバルサウスにおける脱炭素化とレジリエンス向上に貢献できる事業モデルの構築を目指します。
今後も本プロジェクトの進捗について、順次発信してまいります。

