はじめに:記憶を風化させず、「次への備え」に活かす
平成30年(2018年)6月28日から7月8日にかけて日本各地を襲った「西日本豪雨」。記録的な集中豪雨と河川の氾濫、土砂災害が相次ぎ、特に広島・岡山・愛媛を中心に甚大な被害をもたらしました。死者263名、被災者は20万人超、浸水・土砂被害は数十万棟にのぼり、各地に深い傷跡を残しました。
豪雨災害は私たちにとって決して“過去の出来事”ではありません。むしろ、「なぜ繰り返されるのか」を問い、防災体制としてどう進化させるかが問われています。中でも、災害伝承──当時の苦しみや備えの不足を、物語や石碑を通じて“記憶”として残し、行動に変える仕組みこそが、次世代の防災力を育む鍵です。

本記事では、被害データを改めて振り返りながら、災害伝承を現場の「行動」に昇華させる支援策を紹介し、専門企業としてのSAKIGAKE JAPANの関わりも提示します。
1. 被害の実相を共有する──数字と現場が語るリアル
- 倉敷市真備町:浸水被害は7,645棟、死者51名以上。市街地の津波のような濁流が住宅地を襲い、多くの命と暮らしを奪いました。
- 広島県坂町:111年前に土砂災害があった旨の石碑が設置されているにもかかわらず、避難勧告を受けた避難率は町全体の半分でした。情報が住民の行動につながりにくい実情が浮かび上がります。
- 愛媛県西予市:ダムの放水による川の氾濫が発生。この地域には、昭和18年に発生した大雨災害被災者慰霊碑がありました。
これらの統計や事例は、「あなたの町でも起こりうる現実」を浮かび上がらせ、防災への当事者意識を喚起します。
2. 災害伝承碑を「教える場」へ——教育への展開手法
石碑そのものに防災力はありません。しかし、伝承碑を活かした教育活動にこそ、伝承が未来に残る仕組みがあります。
- 岡山県倉敷市では、自然災害伝承碑の情報を、小学生の避難学習や地元史研究に活用しようとしています。
- 愛媛県西予市では、年度ごとの「語り部ツアー」を実施。迅速な避難や二次災害回避の教訓を参加者に伝える仕組みとなっています。
- VR教材や動画制作も増加。リアルな被害映像が被災を体験しない世代にも強い共感を呼び、「備える姿勢」に転換させる力があります。

3. 伝承から「行動」へ——4つの防災支援策
支援領域 | 提案内容 |
---|---|
災害データの可視化支援 | 伝承碑や被災地点をGISマップ化し、自治体・教育現場でリアルな危険地図として活用。 |
教材と体験プログラムの統合 | 写真・証言・VR・防災演習を組み合わせ、地域特性に応じた教材セットを提供。 |
企業向けセミナー・研修 | 防災文化を企業リスク管理へ統合する内容を講座形式で提供。実際の災害現場を題材とした実践講習あり。 |
伝承碑の維持・イベント運営支援 | 定期メンテナンスや、記憶を次世代につなぐイベント運営支援・広報戦略を提供。 |
これらは、伝承を「知る」から「振る舞う」へと進化させるための重要な要素です。
4. 制度と共助の体制構築——伝承を「日常」にするために
伝承を持続的に維持するには、制度設計と地域協力が不可欠です。以下の3分野が重要です。
4.1 事前演習とリアル訓練
- 夜間避難や高齢者避難など、特定状況下の避難パターンに焦点を当てたVRやシナリオ訓練が有効。
- 災害対策士が参加することで、避難所運営に実践的な視座が加わります。
4.2 リスク情報の統合と共有
- 気象庁/自治体/通信会社との情報プラットフォーム構築が必要。
- 緊急通知アプリと連携した一斉配信・避難判断支援によって、初動判断を加速できます。
4.3 被災後の地域再起支援
- 復興サロンや防災ワークショップ、子供向け教材など、災害後のコミュニティ再構築を支援。
- 語り部活動や地域交流イベントによって、「孤立なき復興」を目指します。
これらは、伝承を続けるための制度設計の要と言えます。

5. 技術と文化の融合——防災企業としての展望
SAKIGAKE JAPANは、単なる技術提供にとどまらず、災害伝承と地域文化に寄り添う支援を目指します。例えば:
- 企業・自治体向け研修の共同企画・実施
- 地元と連携した伝承碑維持イベントの広報支援
- 緊急避難訓練やVR演習への技術導入支援
災害は忘れるほど繰り返されます。だからこそ、過去の教訓を次に活かす仕組みを今つくらなければいけません。

おわりに──伝承×テクノロジー=「未来につながる備え」
災害伝承は「先人たちの教え」ではなく、「未来に生きる人々へのメッセージ」です。これを教育と連動させ、訓練と情報と組み合わせ、地域文化と重ねていくことで、「記憶から行動へ」「教育から共創へ」という進化が可能になります。SAKIGAKE JAPANは、そんな未来を共に描くパートナーです。技術、教育、文化を融合し、「伝承から革新へ」防災アプローチを全国の地域とともに育んでまいります。
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