2025年5月14日、私たち株式会社SAKIGAKE JAPANは、世界銀行東京防災ハブ(World Bank DRM Hub Tokyo)が主催する「第25回防災リスク管理セミナー(DRM Seminar)」に参加いたしました。

今回のセミナーのテーマは「変化する世界におけるレジリエントな住宅復興:世界の教訓と日本の革新」。地震、洪水、台風などの自然災害が頻発する中、被災者の生活基盤である「住宅」のあり方が、改めて国際的な注目を集めています。本記事では、セミナーで語られた主要な論点と知見、そして防災技術の社会実装を掲げるSAKIGAKE JAPANとしての視点をお届けします。
「Build Better Before」──災害が起きる前から備える
セミナー冒頭、世界銀行のLuis Miguel Triveno Chan Jan氏から提起されたのは、「Build Back Better(より良い復興)」ではなく、「Build Better Before(災害前から備える)」という考え方です。同氏が紹介した新たなベンチマークツール「Resilient Housing Snapshot」は、政策の隙間や土地確保、柔軟なプログラム設計の課題を明らかにし、被災前の段階でレジリエンスを築くことを可能にします。
災害後に迅速かつ的確な復興を進めるためには、災害前からの備えが鍵を握っている──これは私たちSAKIGAKE JAPANが常日頃から訴えている「予防こそ最大の防災」という方針と軌を一にするものです。
「仮設から恒久へ」──住宅の“つなぎ”を超えた課題
京都大学の槇紀夫教授は、日本の災害復興の歴史を振り返りながら、仮設住宅が「一時的な避難先」から「生活の常態」になってしまうリスクを警告しました。

関東大震災(1923年)や阪神・淡路大震災(1995年)における復興事例から学ぶべきは、「ハードの完成」ではなく、「住民の定着と生活の持続性」にあるという点です。どれほど美しく建てられた復興住宅であっても、地域コミュニティとの断絶や若年層からの敬遠があれば、結果的に空き家となってしまいます。つまり、住宅は「物理的な建築物」ではなく、「人が暮らし続ける場所」でなければならないのです。
「人が主役の復興」──東北から学ぶ“参加型復興”
続いて、東北大学の佃春香教授と井内加奈子教授は、東日本大震災(2011年)後の復興事例を紹介しました。特徴的だったのは、成功した住宅復興には、地域住民自身が再建に関与し、住宅を“自分仕様”に改良していったという事実です。これは「自発的所有感」の象徴であり、地域への帰属意識や継続的な生活基盤づくりに直結しています。また市内教授は、「住宅復興において重要なのは、建築技術だけでなく、非技術的スキル──すなわち“対話力”や“意思決定力”、“信頼関係の構築”である」と指摘。これは災害時の不確実性に直面するあらゆる場面で応用可能な考え方であり、SAKIGAKE JAPANが重視する「ソフト面の防災」に通じるものがあります。
SAKIGAKE JAPANの視点:建てる前から守る、暮らしと命
本セミナーでの学びは、SAKIGAKE JAPANの事業と深くリンクしています。
私たちが展開する防災ソリューションの一例である「Aster Power Coating(耐震塗料)」は、地震や外力から建物の内装を守るだけでなく、居住環境の長期安定化にも寄与します。
また、「Cold Storage Box Portable」は、インフラが寸断された災害直後でも医薬品や食料を安全に保管でき、避難所の生活を下支えします。
防災=非常時対応と捉えられがちですが、私たちは「日常の延長線上」にあるものとしての防災を実現すべく取り組んでいます。
最後に──数ではなく、暮らしの質を問う復興へ
セミナーの終盤、登壇者たちが強調していたのは、「住宅復興の成否は、建てた数ではなく、人が定着し、地域に根付くかどうかで測られる」という点でした。その視点に立てば、今後求められるのは「スピード」ではなく「持続性」、「構造の強度」だけでなく「人間のつながり」、そして「再建」ではなく「再生」そのものです。
SAKIGAKE JAPANでは、本セミナーの参加を通じて得られた知見を、今後の製品開発や事業戦略に反映させていく予定です。特に「Build Better Before(起こる前に備える)」という視点は、私たちの理念と深く通じるものであり、国内外における防災・復興支援のあり方に新たな示唆を与えるものと考えています。
本レポートは、当社の海外マーケティング/渉外担当 Anis Shahirah Ghazaly(アニス・シャヒラ・ガザリー)の現地での参加体験をもとに執筆しました。マレーシア・ペトロナス工科大学で資源・地球環境学を学び、インドネシアや日本で防災調査や広報の経験を積んだ彼女は、現在、東南アジア地域を中心にSAKIGAKE JAPANの国際展開を牽引しています。今後もアジアの視点を取り入れた情報発信を続けてまいります。
SAKIGAKE JAPANは今後も、「防災×テクノロジー×教育」という三位一体のアプローチで、“備える力”を世界中の地域社会と共に育んでまいります。
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