2025年3月11日で、東日本大震災から14年を迎えます。この震災は、地震・津波・原発事故が複合的に発生し、約2万人の尊い命が失われた世界最大規模の災害でした。日本国内では「震災の記憶を風化させず、備えよう」というメッセージが広がっています。私たちはさらに視野を広げ、「日本の防災の知見を世界へ」「未来の災害リスクを低減するためにできること」 にも目を向けてみようと思います。
日本はこれまでに「防災のリーダー」としての立場を築いてきました。特に、2015年に仙台で開催された「第3回国連防災世界会議」において採択された「仙台防災枠組(2015-2030)」は、国際社会における防災のあり方を大きく変えました。本記事では、東日本大震災を踏まえて策定された「仙台防災枠組」の意義と、日本が果たすべき役割について解説します。
冒頭の写真は、津波で全てが流された仙台市荒浜地区の海岸沿いへ、鎮魂のために集まっているご遺族の方々を写しています(2023年3月11日筆者撮影)。
仙台防災枠組とは?
「仙台防災枠組(2015-2030)」は、東日本大震災の経験をもとに、日本が国際社会に提案し、国連で採択された世界共通の防災指針です。この枠組みが特に画期的だったのは、「防災に関する地球規模の目標を初めて明確に設定した」ことです。

具体的には、以下の7つのターゲットが掲げられました。
- 災害による死者数の削減
- 被災者数の削減
- 経済的損失の削減
- 重要インフラの強化
- 各国の防災計画の策定
- 発展途上国への防災支援の拡充
- 早期警報システムなどの国際協力の強化
これにより、各国が防災を単なる「リスク管理」ではなく、「国家戦略の一環」として取り組むようになりました。
日本が世界に示した新しい防災の考え方
仙台防災枠組では、日本が経験から学んだ「より良い復興(ビルド・バック・ベター)」の概念が正式に組み込まれました。これは単なる復旧ではなく、「災害前よりも強靭な社会を作る」という考え方です。
また、以下のような新たな防災アプローチが世界に提示されました。
1. 防災の主流化(Mainstreaming Disaster Risk Reduction)
災害発生後の対応だけでなく、平時から防災を政策や都市計画に組み込むことが重要であると示されました。例えば、日本の耐震基準や津波避難タワーの設置が、各国の防災政策に影響を与えています。
2. 災害前の防災投資の重要性
「災害が起きてから対応する」のではなく、「事前に防災に投資する方が経済的損失を抑えられる」という考え方が強調されました。これは、日本の防災インフラや事業継続計画(BCP)の事例をもとに国際的に認識されるようになりました。
3. 女性のリーダーシップの促進
災害時、女性や子どもが特に大きな影響を受けることが多いため、女性の視点を取り入れた防災計画が不可欠であると指摘されました。日本の防災活動においても、女性のリーダーシップが重要視されています。
4. さまざまな主体の連携(マルチステークホルダーアプローチ)
政府だけでなく、企業・学術機関・市民団体・メディアなど、多様なステークホルダーが連携して防災を推進する必要性が強調されました。これは、日本の自治体と企業が協力してBCPを策定する動きにも通じます。
日本が担う「世界の防災リーダー」としての役割
日本は、過去2回の「国連防災世界会議」も含め、長年にわたって国際的な防災政策の中心的役割を担ってきました。特に、東日本大震災の経験を踏まえた「仙台防災枠組」は、今後の世界の防災戦略の基盤となっています。
さらに、日本は以下のような取り組みを通じて、引き続き世界の防災をリードしています。
✅ 防災技術の輸出:日本の耐震技術や早期警報システムは、海外でも導入が進んでいます。
✅ 国際防災協力:アジア・アフリカ諸国への防災支援プロジェクトを展開。
✅ 企業の防災支援:日本企業のBCP(事業継続計画)ノウハウを世界へ発信。
未来に向けて——「防災×グローバル」の視点を持とう
東日本大震災は、日本にとって忘れてはならない教訓です。しかし、その教訓を国内だけでなく、世界に向けて発信し、未来の災害リスクを軽減することが、日本が果たすべき使命ではないでしょうか。
私たちSAKIGAKE JAPANも、企業向け防災コンサルティングを通じて、日本の防災ノウハウを世界へ広める取り組みを進めています。
グローバルな視点で防災を考え、日本がリードする「より安全な未来」を共に築いていきましょう。